『幕が上がる』はうどん脳の夢を見るか

※ネタバレありの感想です。

『幕が上がる』。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのももクロが主演。原作は演劇界の重鎮・平田オリザの同名小説。脚本は『桐島、部活やめるってよ』の喜安浩平。しかも各界の著名人が絶賛、伊集院光までもが褒めたとあっては否が応にも期待が高まる。監督に関しては、高校時代友達に誘われるがまま『踊る大捜査線The Movie 2』を観に行って「殺人現場に置かれていた洋ナシは“用無し”というメッセージ。つまり犯人はリストラされたサラリーマン!」という驚愕の謎解きに唖然としてその後うわ言のように「面白かったねー」と繰り返すしかなかった記憶と、「うどんが食べたくなる映画でいいなら俺でも撮れる」と某氏にdisられていた記憶しかないけど、不安要素はそれくらいで、基本的には肯定的なスタンスで鑑賞に臨んだ。

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拝啓、山崎弘也様

晩秋の候、時下ますますご健勝のこととお慶び申しあげます。
貴殿のご勇姿をテレビで拝見するようになり早何年が経つでしょうか。
2003年の『M1グランプリ』。恐らくはここから貴殿の躍進が始まったと記憶しています。
敗者復活戦を勝ち上がった貴殿は、破竹の勢いで最終決戦にまで駒を進めました。最終決戦では3位と残念な結果に終わりましたが、視聴者にはともすれば優勝者よりも鮮烈な印象を与え、それはその後のテレビ出演数にも如実に表れていました。
他人のふんどしで相撲を取ることで定評のある『エンタの神様』がすぐさま「あの紳助が絶賛した」との触れ込みで貴殿を重用したことも今となってはいい思い出です。
その翌年の『M1グランプリ』では見事優勝を果たし、名実ともに日本一の漫才師となった貴殿が、現在に至るまで八面六臂の活躍を見せ続けていることはもはや言うに及ばずでしょう。
しかし思い出して欲しいのです。日本一のボケである貴殿の隣に、日本一のツッコミがかつていたことを。
そして知って欲しいのです。その日本一のツッコミが、貴殿の隣から姿を消している間に、非常に仕上がっているということを。

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『R100』とつっこみ

R100』観てきました。
まず感想を言いますが、面白かった!もの凄く面白かった!
観ていない人は早く劇場に行って、自分の目で確かめてください。その上でつまらなかったのならすみません。ただ興業収入や他人の批判記事だけを見て否定的な意見を撒き散らすのだけは勘弁してください。これがヒットしてくれないと次回作ができないし、好きな人は確実にいるはずなので多くの人に見てもらいたい。松本人志が好きな人なら特に。
松本人志の映画」を見るときの評価軸として、“映画”と“笑い”と“松本人志の映画”の3つが存在する。貶している人の多くは“映画”の文法から作品を読みとろうとしているから低評価になる。確かに演出はベタに走るきらいがあったり、脚本は省略ではなく説明不足であったりと粗が多く稚拙だ。その点に関しては私も明らかに力不足だと感じている。(たまにゾクッとするような画もあるのだけど)
一方、“笑い”として見ようとすると90分以上の尺はコントとしては長すぎるし、所謂コメディ映画として成立させようという気もない。単純な笑いを期待していったら肩透かしを食らうだろう。ただ『VISUALBUM』のような松本人志的な笑い(こういう言い方如何にも信者ぽくて嫌だけど)が好きな人にとって『R100』はとても満足いく出来だと思う。『大日本人』も好きな作品だが、そこから試行錯誤を経てやっと松本人志の映画としての正解が出たように思う。
しかしこの映画を褒めるのがまた難しい。褒めるほどにネタバレになり興を削いでしまうから。これまでの作品にもそういう性質はあったと思うが、今回はとりわけ事前情報を入れずに見て欲しい。そういう訳で以下はネタバレを含みながら褒めるので、本編を観ていない人は決してこの感想を読まずに劇場に行ってください。

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