品川Twitter炎上に思う

私は性格の悪い人間が好きだ。

ただしそれはあくまで露悪的な人に限ったことで、テレビなどパブリックな媒体におけるヒールとしての性格の悪さを求めているだけだ。だからダウンタウン有吉弘行が現実世界においてどれだけ性格が悪かろうと関係なく、表層上笑えさえすれば何の問題もない。逆にリアルな性格の悪さをネタにまで昇華できるのあれば、それはむしろ歓迎すべきことだ。(『ガキの使い』の裁判シリーズなど)

で、今回の品川Twitter炎上である。

事の発端はTBSラジオ山里亮太の不毛な議論』2月3日放送回。
その日は節分ということで、恵方巻きを頬張って嫌いな人(鬼)の名前を伏せながらそのエピソードを語るというオープニング企画だった。
以下、問題部分の書き起こし。

(『M-1グランプリ2004』直後でブレイクしていた時に出演した『リンカーン』にて)

「松本さんがいじってくれる訳ですよ。『何だ山ちゃんその髪型、何の副作用やねん』と」

「全然そんなこと(面白い返し)言えなくて『ちょっと何すか。どこイジってんすか』つってすごい変な空気になっちゃったの。ふわっとしちゃったときにさ、そのさ、恵方巻きちょうだい。“ふもももひもひ”(※恵方巻き頬張り中)が来てさ、言うのよ俺に。しかもさ(品川の方が)先輩よ。『すごいですね〜。やっぱ旬でぽっと出の人って先輩がああいう面白いこと言ってくれても、スベッても平気なんですね。いや尊敬します。握手してください』って。カメラ回ってないときに。地獄じゃねこれ?テレビ出たばっかよ」

「それをず〜っと楽屋に戻るときも『あ、さっきの旬の人ですよね。大丈夫ですか。今日面白いこと言ってませんでしたけど』とか言ってくんのよ。で、トイレで会ったらさ、今度何て言うと思う。『あ、どうも。いいですね〜』って言われて『え、何がですか?』って言って、『笑われる人って楽ですよね。僕ら笑わせる方だからちょっと大変なんですよ。いいですよね、いるだけで面白くないこと言ってても笑われてるから』。鬼じゃね?それ何の意味があんの」

「俺何にもしてないのにいきなりそれだけ追い込まれるわけよ。で、品川さん・・・あ、“ふももも”・・・あの・・・flumpoolで『two of us』 (曲紹介)」


その前段でも某局アナウンサーや某局プロデューサーの悪口を散々吐いた後に実名を言ってしまうという流れはあった。品川のエピソードにしても最後の実名をぽろりと言ってしまってからの曲紹介への流れなんて見事でネタとして捉えることも出来ただろうが、内容があまりにリアルで「笑えねー」ということだったのだろう。
私もこの放送を聴き、「これはひどい」との思いでこのエピソードをTwitterにつぶやいてしまった多勢のうちの一人である。その際には文字数の制限から恵方巻きのくだりは抜け落ち、前後の文脈もなく、ただ単に品川が山里にした悪辣な仕打ちのみを伝える形になった。
いや、文字数の制限と書いたが、実際のところ私も含め皆がこのエピソードで伝えたかったことは結局“品川の性格の悪さ”なのだと思う。「山ちゃんのこの話面白いから聞いてくれー」ではなく、「やっぱ品川は性悪だったよ。見てみろよー」ということだ。だからYahoo!ニュースなど世間で流布されている情報で必要十分だったのだ。

そう、品川は性格が悪い。
ラジオで陰口を叩きまくる山里も十分に性格は悪いと思うが、それは露悪的であり、今回のような騒動を起こす危険性を孕みながらもネタを提供するのは芸人としての一つの真摯な姿勢だろう。
ただ品川はリアルに性格が悪い。“いい人”を装うが、そのメッキをはがすかのように周囲から貶められる。ケンドーコバヤシから「世間から嫌われる才能を持ちすぎている」と言われ、アンタッチャブル・柴田から「芸人としては超一流だけど、人として二流」と評される。
品川の自己プロデュース能力はかなり高く、芸人からオタク、料理、俳優、作家、更には映画監督と着実に己の志向する未来へと進んでいる。にもかかわらず世間からは嫌われている。
それはやはり『ひな壇芸人』というエポックメイキングな企画のせいではないだろうか。“ひな壇芸人”という職能集団の存在を知らしめた功績は多大だが、それと同時に自らの手の内を曝け出してしまった罪過も同様に大きかった。品川は自分の立ち位置を精査に狙いすまし収まっていくその計算高さ、狡猾さを世間に周知させてしまったために嫌われることとなってしまった。いや遅かれ早かれ“おしゃべりクソ野郎”の本性はバレる運命にあったのかもしれないが。
それはさておき、そんな品川を嫌悪している世間(特にネット住人)は常に品川の足をすくうための絶好のエサを求めていて、山里はたまたま与えてしまった。ただそれだけのことのように思う。


<参考>
品川という名のモンスター
http://d.hatena.ne.jp/karatedou/20090731#p1