または私は如何にして一眼を止めてコンデジを愛するようになったか

ある日、Twitterでフォロワーさんが「五万くらいのカメラほしー」的なことをつぶやいてて思わず「我が家はフジフィルムのX70使ってますよ!最高ですよ!」的なことをリプライかましたんだけど、これ「しまったなぁ」と思った。

なぜ「しまったなぁ」かというと用途が不明なのに価格だけで突撃してしまったからで、目的と手段を間違えたら意味がないじゃないですか。ディーン・フジオカと結婚したい牧野ステテコくわばたりえが上から目線でアドバイスしてもしょうがないし、『ワイドナショー』で武田鉄矢の話を真剣に聞く人なんて誰一人としていないじゃないですか。私はそういうことをやってしまったわけでせめてもの罪滅ぼしになぜ私がX70を選ぶに至ったか、そして約1年使った結果どうであったかを記したいと思う。あと「後継機はXF10です!」とも言ったがこれも正確には違う。すみません。

元々私はデジタル一眼レフデジイチ)というやつを使っていた。ペンタックスのエントリー機K-30。カメラ好き界隈からは「素直にキヤノンニコンにしとけばいいものを」と揶揄されるペンタックス。確かに友人のキヤノン機を使うと「オート綺麗~」「フォーカス早~」と感心したが、ペンタックス機はKマウントのオールドレンズがそのまま使えるし、設定を自分なりにいじって撮るのは楽しかった。妻との思い出も付き合ってる頃から随分撮ったしいいカメラだったと思う。

ところが子供が生まれてからこのカメラが活躍する機会ががくんと減った。オムツやミルクや着替えやおもちゃなど「八甲田山か」という重装備に加えて重くてデカい一眼レフを持っていこうなどという気力はもはや残っておらず、気軽に持ち出せるカメラはないかと色々調べ始めた。

で、重視した点は3つ。

①画質

②機動性

③価格

当たり前といえば当たり前の項目なんだけど。

まず①の画質は今までデジイチを使っていたからそこから画質は落としたくない。センサーサイズはデジイチ相当が理想。センサーサイズというのはカメラでいうところのフィルムの大きさですね。アホな言い方をすれば(というかこの後ずっとアホな言い方でやります。素人だから)センサーサイズが大きければ大きいほど画質がよくなる。メーカーがアピールする「○○万画素!」なんかよりこっちの方が大事。何なら画素は少ない方がいいという人さえいる。

センサーサイズを大きさ順に並べるとこんな感じ。中判とか独自規格は無視。

フルサイズ(最近流行ってる。バカ高い。35㎜フィルムと同じサイズ)>APS-C(デジタル一眼の主流)>マイクロフォーサーズオリンパスのPENとかおしゃれミラーレス)>1型(高級コンデジの主流)>1/1.7型(一昔前の高級コンデジ)>1/2.3型(一般的なコンデジ。カメラ機能をアピールするスマホもこれが多い)

なのでスマホが一眼並みの画質というのは嘘です。画像処理が今風(インスタ映え的)で、スマホの画面サイズで見る分には遜色ないって程度かと。あと「一眼ぽい」写真といったら「背景ボケ」だと思うんだけど、一部の変態スマホはレンズを二つにして合成でそういう写真、なんちゃって背景ボケを作るという裏ワザ的なことをやってたりする。iPhoneとかファーウェイ(こっちが元祖)とか。でもやっぱりパソコンの画面で見たりすると「粗いな」と思ったりするのでセンサーサイズは重要。

センサーサイズの他に重要なのはレンズの明るさ。F値で表され、この数字が小さくなればなるほど「明るい」ということになる。レンズが明るいとどうなるかというと、暗いところでもよく撮れるし、シャッタースピードが速くなるし、ボケ量が多くなる。厳密にいうとセンサーサイズやISO感度も絡んでくるけど複雑になるので割愛。

まぁセンサーサイズが大きくてレンズが明るいと、室内で動く子供を撮ってもブレにくいし、背景のボケた一眼ぽい写真も撮れる、という感じです。

次に②の機動性。ミラーレスも魅力的ではあったがここは機動性重視ということで高級コンデジでいこうと決めた。説明が遅くなったけど、デジイチはレンズ交換できるやつ、ミラーレスはデジイチからミラー(そういうのがある)抜いて本体を小さくしたやつ、コンデジはレンズ交換できないけど一番気軽なやつです。さっき説明したとおり高級コンデジの主流は1型センサー。ソニーのRX100シリーズが有名。小さくて軽いうえにズームもできるし確かに魅力的ではあったんだけど、画質的にAPS-Cサイズはどうしても譲れない。となると諦めるのはズーム機能で、単焦点コンパクトの雄・リコーGRかその対抗馬・フジフィルムX70の二択となったわけです。(当時キヤノンがG1X Mark Ⅲという400g以下の軽量小型ボディにAPS-Cサイズのセンサーと光学3倍ズームのレンズを搭載した鬼のようなスペックの高級コンデジをリリースしたのだけど、価格も10万円超と鬼のようだったので③の観点から断念した。)

あー、長い。長い長い。簡潔に書いたつもりだけど長いな。自分の文章に飽きるわ。

基本的にスペック厨であるから、何かを買うときはこんなふうにとことんまでスペックを比較する。比較しすぎて堂々巡りになることもしばしば。それで思い出したのは『アメトーーク』の「カメラかじってる芸人」の小籔だ。「マトリックスで使われていた」というミーハーな理由でいきなりハイスペックなカメラに手を出した品川をボロカスにたたき、皆がごまんと撮ってきた「ぽい」構図の写真を小手先のテクニックで撮るユウキロックを地獄の業火で燃やす。犬、空、カプチーノ、小さいサボテンを撮るカメラ女子をバカにし、「友人や家族、自分の大切なものを撮れ」と諭す。そうだ私の撮りたいものは愛する我が娘だ。スペック比較に拘泥するばかりに大事なものを見失っていた。

そうして考えを改めた私は最終的にフジフィルムのX70に決めた。理由は「色がなんか好みだから」。

うん。結局はそういうもんです。「フジカラーで写そう」とはよくいったもので、元々フィルムメーカーであるからそのデジカメもフィルムのような色合いを出すのが得意なようで、X70にも「フィルムシミュレーション」という様々なフィルムの特色を再現するモードが搭載されている。とはいえ私が使うのはもっぱら標準フィルムのPROVIAで、オールラウンダーかつ肌色の発色が自然で娘を撮るのにぴったり。使っておよそ1年になるが撮った写真は3千枚を超えた。そのほとんどが娘、娘、娘。それもこれも軽量・小型であるということに尽きる。近所の公園に行くのですらカメラを持っていくし、構図も設定も何も考えず娘が楽しそうな様をパシャパシャ撮っていく。あとはチルト液晶(液晶画面がグルグル動くやつ)が便利で、娘の目線に合わせて結構下からのアングルでも撮れる。焦点距離が28㎜で画角がiPhoneなど一般的なスマホと同じなので人物も風景も日常的なスナップでは必要十分。それでいて(本当の)一眼並みの高画質。ただし先にも言ったようにズームがないので結婚式など自分が動けない場面にうっかり持っていくと死ぬ。定点カメラのように同じ構図の写真しか撮れないし、遠くの席に座ってしまおうものなら撮影対象が小さくてかなわない(疑似ズームとして35㎜、50㎜まで拡大できるけど限界がある)。そういう欠点(欠点ではなく手段と目的が合っていないだけだが)を除けば私にとってほぼ完璧なカメラ。そう。私にとって。だからこれを見てX70をいいなと思っても、もしかしたらあなたにとっては何か足りないかもしれないし、ポンコツとまで評するかもしれない。そしてここまで魅力を説明しといて申し訳ないのだがこのX70、ディスコン(生産終了品)なのだ。いや私が買おうとした時もすでにディスコンだったので実は中古で購入した。それで事実上の後継機がXF10になるのだけど、チルト液晶を廃してたり、ダイヤル類も簡素にしてたり、かなりカジュアルなコンデジに寄せてるし、なによりシリーズ名が変わってるのでX70とは毛色が異なるかもしれない。そこらへんは各自判断してください。

基本的なスペックはここに書いてあることを参考にしていただければ、あとは「自分の撮りたいものは何か」で買うべきカメラが見えてくるかと思います。今の時代、品川のように金に物を言わせればシャッターひとつで「綺麗な写真」はいくらでも撮れますから。それが「いい写真」かは別にして。

(本当に娘の写真ばかりなので作例を載せずに終わります)