私、スナイパーになりまして - コーワYF30-8使用レポート


過日、『恵比寿リトル歌劇団』のために双眼鏡の購入を決意した。
『恵比寿リトル歌劇団』とはエビ中こと私立恵比寿中学のファンクラブ限定イベントで、エビ中主演のミュージカルだ。そう、ミュージカル。見間違いじゃないよ。アイドルのミュージカル。
ちょっと前まではアイドルのミュージカルなんて誰が見に行くんだと思っていたが、それが好きになると見に行くものなんだね。分からないものだ。
アイドルにハマってからというもの古い価値観が次々に更新され感動と恐怖に打ち震える毎日です。草々


それはさておき双眼鏡だ。普段のライブとは違いコールもMIXもない着座しての観劇ということで、これはじっくり堪能するために双眼鏡が必須だと思い至った。
しかしひとたび調べ始めると、どこの界隈にもマニアというのはいるもので、ダハ式だのポロ式だのひとみ径だのと専門用語が出てくる出てくる。こだわりも人それぞれで、やれコーティングがどうしただの色収差がこうしただの。価格も高級機になれば10万円、下手すりゃ20万円クラスのものまで……。深遠なる双眼鏡の沼に嵌りかけていたその時に巡りあったのがこのエントリで、非常に分かりやすく参考にさせてもらった。


ジャニヲタのためのコンサート用双眼鏡購入ガイド~自担をじっくり観察するために~ - ジャニヲタ見聞録


とはいえ、結局のところ家電量販店に行き実機を試すのが一番良い。(いやまぁ、上のエントリでも「身もふたもないことを言うと家電量販店で店員の方に聞いてみるのが一番」と書かれているし…)
それで高いもの(とは言っても2〜3万円)を見るのが良い。私も初めはタンクローあたりの5千円程度のコンパクト機を考えていたのだが、高いものになると見え味が抜群に良くこれはもうまったくの別物。
ただ双眼鏡にそこまで金出せねえよというのが正直な話でもある。
そこで私が購入したのが、コーワのYF30-8。

倍率は8倍。実売価格は約1万円ながら、2〜3万円クラスの双眼鏡と遜色がなかった。いや素人目だが店頭では一番綺麗に見えたくらい。しかも防水仕様なので屋外ライブでも使え、レンズがカビにくいというのも魅力的だった。
コーワといったらキャベジンの会社かと思っていたが、光学でも有名らしく観光地によくあるコイン式の双眼鏡なんかはほとんどコーワ製だとか。かつてはカメラも製造しており、マニアの間では今でも評価が高いという。


さて、前置きが長くなったが、今回はこのYF30-8がとにかく素晴らしいという話。
ライブでの使用感をつらつらと書いていく。

私立恵比寿中学『恵比寿リトル歌劇団』in 赤坂ACTシアター

まずは、件のエビ中のミュージカルである。
座席はW列でほぼ最後列。ステージとの距離は約30〜40m。舞台用の劇場なので、肉眼で演者をきちんと捉えられはするが、仔細な表情までは若干厳しいといった印象。
双眼鏡を覗くとメンバーの全身が見えて少し余裕がある。横並びで4人までなら同時に捉えられる。表情も細かく確認でき、ぁぃぁぃが登場した時に瞳の潤みまで見えて軽く震えた。
またレンズが明るいからだろう、暗転時に移動するメンバーまで見ることができた。…うん、大丈夫。ここは引くとこだから。自分でも双眼鏡を覗きながら引いていたもの。
しかし、暗い場面で肉眼で見るよりはっきり見えるというのは、双眼鏡の意外な利点だった。
あと、重量もコンパクト機に比べたら重いとはいえ475gなのでそこまで疲れない。長時間ずっと覗いている訳でもないし。またある程度本体の大きさがあるので構えが安定する。

私立恵比寿中学『夏のファミリー遠足 略してファミえん』in 河口湖ステラシアター

座席は2階の3列目だったので、恐らく赤坂ACTシアターと同じくらいの距離感。
半屋外の状況下でも変わらず双眼鏡の威力を発揮。しかも解像度が高いというのか見える像が鮮やかで、立体感も強調されるため、肉眼で見るよりも綺麗なのだ。普通に見るライブとはまた別の感動がある。
ただライブ中はコールをし、サイリウムを振り、時には振りコピ、ジャンプもするので、首から下げてはいるが少し大きめの双眼鏡はちょっと邪魔。周りの人の迷惑にならないよう、左手で双眼鏡を押さえつつ楽しんだ。
『いい湯かな?』を歌うりななんが泣き顔を見せた瞬間にはすかさず双眼鏡を構え、その頬に伝う涙をこの目に捉えた時は恐ろしく感動したとともに「悪魔の道具を手にしてしまった」という思いもあった。ひょっとしたら双眼鏡を覗く行為は背徳感との戦いなのではなかろうか…。

ももいろクローバーZ『夏のバカ騒ぎ2013』in 日産スタジアム

座席は1階東側スタンドの5列目で、ステージは真逆の西側スタンドにあり距離は約100mだろうか。もうここまでくると8倍の双眼鏡では無力。肉眼で豆粒程度にしか見えないメンバーがキン消し程度の大きさになるくらい。毎年お馴染みの放水を受けつつ覗いていたのでまぁ防水仕様は役に立ったかな。
メンバーがサブステージまで来て、距離が50〜60mにまでなった時にやっと双眼鏡を使う意味が出てきた。日も落ちた頃で、ライトで照らされたステージと、客席で光るサイリウム、その遠近感が双眼鏡を覗くことで強調され、ちょっと感動するレベルの美しさだった。
しかし、スタジアムクラスで使うなら20倍くらいの倍率が必要なんだろうな。


…という訳で、ホールクラスで使うならYF30-8の実力は必要十分以上、素晴らしすぎる。ライブでの新しい楽しみ方を教えてくれることと思う。