読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

私立恵比寿中学の『手をつなごう』MVが素晴らしすぎる

先日、私立恵比寿中学(通称エビ中)の『手をつなごう』のMVが公開され、これがとにかく素晴らしいと話題になっている。私の中で。
百聞は一見に如かず。とりあえず見ていただこう。いや見てください。お願いします。



はい、見ましたね。素晴らしいでしょう。それでは解散。
……とこれで終わっていいのだが、詳しくこのMVの素晴らしさについて述べていく。いや言わせてください。お願いします。


アイドルに関わる人はすべて、教育・勤労・納税と等しく“アイドルの瞬間の美しさを記録する”という義務を負っている。
アイドルは、特に十代においては、常に成長し続け、一分一秒として同じ場所にとどまってはくれない。それは身体的な意味でもあり精神的な意味でもあるが、それだけではくくれない“瞬間の美しさ”というものが曰く言い難いアイドルの魅力の一つだ。だから、アイドルに関わる人にはそれを後世に伝える義務がどうしたって生じてしまう。もうしょうがない。
そういう意味では、このMVを撮った方々は日本の名工として厚生労働省から表彰せらるべき仕事ぶり。見たら分かると思うが、エビ中の全員が奇跡のような可愛さ。コンセプトや衣装を排して、現時点のエビ中のありのままの魅力を見事にとらえている。
それだけなら「かわいいねペロペロ」と一人MVを眺めていればいい話だ。何ならエビ中に関しては世間にバレなければいいと思っているからあえて拡散すべきではないのだが、アイドルの魅力をとらえていると同時に一つの作品として途方もなく素晴らしい。しかもアイドルがやることにきちんと意味があるものになっている。


まずこのMVは全編ワンカットの長回しで撮影されている。映像とは空間・時間の一部を切り取り記録するもので、その時点で多かれ少なかれフィクションのものとなる。しかしワンカットの映像はフィクションと現実の境目に触れる。やり直しのきかない一回性がより現実に近い感覚をもたらす。冒頭こそ一度画面から消えたメンバーが再び現れループする不思議な映像になっているが、カメラが折り返す時には松野莉奈が次の立ち位置に向かって走り出す姿が見切れ、このMVが彼女たち自身の力で紡いでいる物語だと分かる。
そして、このMVにはエビ中の他に、小学生くらいの男の子と女の子、大学生くらいの男女のカップル、主婦とサラリーマンの夫婦、そしておばあさんが登場する。この老若男女とエビ中が歌詞どおり手をつなぐことで世界をつないでいく。「力を合わせよう」と同じ世界で共に前を向いて生きていくことを歌う。
あるいはこの老若男女を一組の男女の一生だと解釈すればエビ中がつなぐのは過去、現在、未来で、「勇気出して歩き出そうよ明日へ」と明日への希望を私たちに訴えかける。


私もそれなりに年を重ねて、社会を経験し、不幸にもひねてしまった大人だ。本来ならこんな愚直すぎる歌詞と映像、思わず鼻白んでしまうだろう。ところがエビ中が手をつなぎ歌っている姿を見ると、不思議にも素直に受け入れられる。それは今この瞬間の彼女たちがやるからこそであり、作為を飛び越えて人の心に届けて“しまう”アイドルの強さだ。
このMVの中には幸福で祝福された世界しかない。そんなもの綺麗事じゃないかと罵られるかもしれない。それでもそんな綺麗事を信じさせてくれることが、アイドルがいることの意味なんじゃないかと割と本気で思う。
その多幸感を体現した『手をつなごう』のMVはやはり傑作だ。


〔追記〕
メイキング入ってます。