『伝説の一日』での寂しさ

先日、吉本興業創業100周年記念公演『伝説の一日』のライブビューイングに行ってきた。
見たのは第四回で、お目当てはダウンタウンとごっつメンバーによる『ポケットミュージカルス』。
『エキセントリック少年ボウイ』から始まり、『オジャパメン』、『明日があるさ』、さらには『WOW WAR TONIGHT』まで。松本人志も生で「BUSAIKU HAMADA」を歌い、ダウンタウンで育ってきた世代としては感動するしかない豪華な内容だった。その一方で、一抹の寂しさを感じたのも事実。
それは、常に「新しさ」を切り拓いてきたダウンタウンが「懐かしさ」に陥ってしまったと感じたから。あぁ、こういうことをするようになってしまったんだと。
そこで『ブラマヨとゆかいな仲間たち』でバカリズムが言っていたことを思い出した。

バカリズム「ちょっと真面目な話になると、大御所の方でもうネタをやられなくなっている方が『10年ぶりくらいにネタを披露!』みたいなこととかたまにあるじゃないですか。そういうときに勿論面白くてウケてはいるんですけど、ちょっと懐かしさがあるときってありません?」
小杉「現役感がないというか」
バカリズム「現役感がないというか、要は当時の“方程式”なんです。勿論そこでテクニックもあるしウケるんですけど、懐かしい感じになる場合、面白いんですよ大前提として、でも『あの時のあれだ』というように自分が思われるようになったら嫌だな、と思うから常に新しい方程式を広げることをしていなきゃなというのがあるんです」

『MHK』でも先鋭的な姿勢を見せ、映画というジャンルでも(成功かどうかは別にして)独自の笑いを切り拓いて、未だ現役であることを見せてくれた松本人志だからこそ少し残念に思ってしまった。
松本人志自身もその苦悩を抱えている。『松本人志大文化祭』の宮本茂との対談で以下のように吐露している。

松本「僕が周りから言われることなんですけど、どうしても例えば自分がやってたコントを『もう一回やってくれ』、『別にキャラはそのままでセリフさえ変えてくれたらええやんけ』って好きな人は言ってくれるんです。でも、僕はそれはやりたくなくて、やっぱプラス何かがないとやる意味がないと僕は思うんです。そんなことを言っているくせに、殊ゲームのことに関しては、宮本さんに『もう同じでいいからステージ違いでもやってくれ』と僕が思っている矛盾さ。あぁやっぱファンって勝手なものだなぁと」「いやぁ、でも答え出ないですもんねぇ」

「ファンの期待に応えたい」、その一方で「新しいものを創りたい」という二律背反の中で懊悩している。そんな中、『伝説の一日』で見せたパフォーマンスは完全なるファンサービスだったのだろう。それでも、贅沢が過ぎるとは思うが、あの場でこそ新ネタをおろして欲しかったなぁ、と思わずにはいられなかった。未だ現役である松本人志ダウンタウンに期待してしまう。浜田雅功の「ダウンタウンの最後はね、花月で漫才しようて二人で言うてるんですよ」という言葉を信じて。