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駆け抜けるももクリの夜

2011年12月25日、寒風吹きすさぶさいたま新都心で行われたもう一つのクリスマス。
『ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会』
私はその拍手する、声援が聞こえる熱狂の渦の中に立っていた。


2011年春、私はある5人組の少女に心を奪われた。
彼女たちの名前は、ももいろクローバーZ
きっかけは何だったのだろう。死んだ目さんの「にわかファンの自分が、ももクロの魅力を全力で紹介してみる。 - 死んだ目でダブルピース」だったかもしれないし、『ゴッドタン』の「照れカワ芸人」だったかもしれない。
ただぼんやりとTwitterに流れてくる評判を見ているうちに、いつの間にかYouTubeで動画を漁る日々が始まっていた。


それまでももいろクローバーZを、いやももいろクローバーを知らなかったわけではない。
実はその結成当初からアイドル好きの友人に猛烈な推奨を受けていた。まだ路上ライブを行い、メンバーの入れ替えが激しく行われていた時の話である。
その友人とは『ももいろパンチ』からカラオケで歌っていたし、『行くぜっ!怪盗少女』も好きな曲だったが(元々ニコ動でファンだったヒャダインの作であることは後々知る)、歌っている本人に興味が向くことはなかった。


「今、会えるアイドル」というコンセプトがAKB48の「会いに行けるアイドル」のカウンターというよりはコバンザメ的商法に感じられ、和装からのインディアンという今なら魅力と感じられる「何でもあり」感も単なるコンセプトの迷走としか見ていなかったし、アイドル体重を掲げた公開計量といった曰くプロレス的な仕掛けも人非人の所業と思っていた。(いや今でも賛否あるところだと思うが)
更に『不毛な議論』に度々登場しようとも、また山ちゃんが新しいアイドルにハマってら、くらいの印象であったから、あろうことか早見あかりの脱退すら大した思い入れもなく傍目に見ていた。
そもそもアイドルグループの脱退・加入について私は好意的な目で見ていない。大概は封殺される過去になり、歴史に不連続性を生むし、本人と運営との齟齬を感じさせ、「所詮は傀儡」との思いを強くさせてしまうからだ。しかし、早見あかりの脱退には本人の意思があり、ストーリーがあった。だから『Z』への新生後、彼女たちに“覚悟”を生んだのだと思う。


その頃からだろうか、じわりじわりとももクロが私の生活圏を侵犯し始め、YouTubeで動画を漁っていくうちに、ひょっとしたら「今」とんでもなく面白いグループなんじゃないかということを思い始めた。
そして、全力のライブ映像と初めて対峙したときに、「これは追いかけなければ」という思いに駆られた。
表層上でしか知らなかった過酷な試練にしても、大人の仕掛けた罠をくぐり抜ける、いや、真正面から立ち向かう彼女たちの姿に心を打たれた。


7月発売の名盤『バトル・アンド・ロマンス』により更なる深みにハマった後、10月に『ももクノ60分』に参加した。恐らくはこれが決定打だったように思う。
初めて生で、しかも至近距離で見る彼女たちのパフォーマンスは、「全力」と表現しては陳腐なくらい、圧倒的なエネルギーに満ち溢れていた。観客の声援に呼応し、開始から数分と経たず全身が汗に濡れ、瞬間瞬間に輝くももいろクローバーZの5人。小さな体躯にその力の限りを込めて踊り、歌い、笑顔を我々に向ける。この瞬間に、私は悪魔に魂を売り渡した。彼女たちが煌めくのは一瞬だけかもしれない。しかしその一瞬を駆け抜けていく彼女たちを見届けようと決意した。


そして、2011年12月25日、さいたまスーパーアリーナ
Twitterを通じて譲っていただいたチケットはまさかのアリーナ席。眼前に、感涙に瞳を潤ませる有安を見た瞬間に、あらん限りの力を振り絞り5人に向かって叫んでいた。
『ももクノ』への参加以降、握手会にも参加し、お渡し会にも参加したが、彼女たちの本領はライブでこそ輝く。ステージで歌い踊るその姿に私は魅了されたのだ。1,300人を集めた『ももいろクリスマス』から1年、1万人の会場を埋め尽くすまでに成長した5人が全身全霊でパフォーマンスする姿。私が見たかった光景がそこにはあった。
私は格闘技に関して全くの門外漢なので、年末にさいたまスーパーアリーナで開催することの意味など知らなければ思い入れもない。レニー・ハートが曲紹介をしようが、ケイ・グラントが登場しようが、それは記号的でパロディの存在でしかない。ただ元ネタなんて知らなくても、そういった演出とももクロの親和性は高く、とにかく楽しいの一語に尽きる。
Chai Maxx』で燃え上がる火柱に雄叫びをあげ、『サンタさん』で披露された「れにちゃんのちょっといいとこ」(=手品)を親戚のおじさんのような目で見守り、『ももクロ春の一大事2012 横浜アリーナ2DAYS』の開催を5人とともに驚き、マーティ・フリードマンの登場に熱狂した。
最後には『あの空へ向かって』を歌う5人の後ろにこの1年を振り返る写真が流れて、彼女たちがいかに濃密な時間を過ごしてきたのか、そして何を思い何を感じたのかに思いを馳せた。
振り返ったときに「青春」と呼ぶであろう時代を、彼女たちは「アイドル」に、いや「ももクロ」に費やしている。ありえないほど過酷で、困難な状況をいくつも乗り越え、ただ前を見て進み続けている。そしてそんな状況の中にあって常に輝いている。
ももクロちゃんは止まらない」
そう強く強く感じるライブだった。そして2012年もまた私はももいろクローバーZを追いかけ続けるだろう。